山下新太郎《峯子像》

1929(昭和4)年
水彩、パステル・紙、27.2×24.2㎝

画面左下に鉛筆で薄く1929年と制作年が記入されているため、峯子が6歳頃の作品と分かります。形の良い頭とまっすぐ伸びた首が、まるで古い仏像のように美しく調和を見せています。顎の下の肉付きや、薔薇色に染まった頬の膨らみ、細い髪の表現からは、幼い子供の身体特有の柔らかさや繊細さ、温かみが伝わってきます。淡い背景と襟元の薄い水色に彩られた、清らかな横顔です。峯子本人によると、山下は子どもたちをモデルにして絵を描く際には「ギザをあげるよ」と声をかけたそうです。「ギザ」とは側面にギザギザのある50銭硬貨のことで、モデルを嫌がらないための配慮だったのでしょうか。峯子によると、幼い頃には使い道も分からず、母親に勧められてモデル料は箱に入れて貯めていたそうです。