山下新太郎《私の庭のバラ》

1939(昭和14)年
水彩、鉛筆・紙、35.4×26.6㎝

作品の左下にフランス語で「私の庭のバラ」と書かれ、1939年5月31日の日付も入れられています。バラは山下のお気に入りのモティーフで、山下家の庭にはバラ園がありました。花屋で花を買って描くことは一切なかったということです。バラが変化する様を9日間連続して描いた《薔薇九日》という作品も残しています。山下は、バラだけでなく、庭にある様々な植物を、ある時は植物それだけで、またある時は娘たちとともに描いています。山下は、子どもの成長と同じく、植物が自然の中で変化しうつろう様に大きな関心を寄せていたと考えられます。そして山下にとっての庭は、家族とともにある幸せな空間そのものだったのでしょう。峯子によると、戦時中にはバラ園は、家族の命をつなぐための野菜畑となったそうです。